小野光太郎とは

最近、地元季刊誌に掲載された記事を下記に紹介したい。

誰もが耳を疑った「小野グループ」破綻のニュースがセンセーショナルに流れてから早や1年。
沈黙を守っていた小野光太郎代表ではあったが、一部にしか個人保証をしていないにもかかわらず自ら法的制裁を申請し、自宅をはじめ多額の預金、株式、そして2000点近いとされる美術品等すべての私財を提供し経営者としての責任を取っている。
しかし、風聞とともにネットなどでは小野グループの「負」の部分のみが過大に喧伝されているが、「地域貢献の申し子」として福井県に多大な功績を残した小野光太郎氏、及びグループ各社に在籍した役職員の名誉を守るためにも事の真相を徹底究明する―

小野光太郎氏は粉飾決算に一切関与していない

福井県が誇る「地方豪族の雄」小野光太郎氏が率いる「小野グループ」。
その中核3社が会社更生法の手続きに入ったとの一報が流れたのは昨年の10月26日−
誰もが耳を疑うショッキングなニュースだったが、10年以上にわたっての不正な経理処理が発覚し、貸出金178億円が回収不能の恐れがあるとして福井銀行側が会社更生法を申し立てるという異例の経緯であった。
保全管財人は、「トップ3(小野光太郎代表、小野稔副代表、公認会計士)で一連の不正経理が行われていたようだ」
こう記者会見で語ったが、長年、小野グループを取材しその内情を知り尽くしている本誌が改めてこの一件を精査したが、小野光太郎代表が今回の粉飾決算に関わっていないことは断言できる。
その証左は後述するが小野光太郎氏に最も近い元番頭格にあたる人物も、「資金借り入れについては銀行との具体的な交渉が必要だが十数年間も銀行との交渉をしたことがない小野代表が担当者相手に粉飾までするとは考えられない。第一、あの誇り高い小野代表が粉飾決算書類を手にして融資を乞うなどということは到底考えられない」
こう証言している。

財務部長が相場取引で巨額損失

今回の不正経理−
発端は取締役財務部長M氏の相場取引。
公認会計士の資格を持ち、グループ内の財務を一手に任されていたM氏だが、大手証券会社との問の相場取引で巨額の損失を出してしまう。
で、それを取り返すべく会社の粉飾決算書を銀行に提出 − 信じ込んだ銀行が無担保、無保証で巨額の融資を行ったのである。
M氏は使い込みをするような人物ではなく必死に相場での挽回を図っているうちに深みにハマったと見られる。
普通ならM氏を背任で刑事告発しそうなものだが、それをしなかったのには訳がある。
3年前 − 小野グループ内のT社(巻線機メーカー)のK社長が見積もり違いから約1億円の粉飾決算を出してしまう。
このことを小野光太郎氏は強く叱責したのだが、その結果、この社長は真っ昼間、社長室で自殺(縊死)してしまったのである。
このことに当時の小野代表は大きなショックを受け、心から反省したともいうが、今回のM氏も「命」に代える可能性が大と判断した小野光太郎氏は告発を逡巡。
結果的にはこの判断が金融機関に大きな誤解を与えることになり、自らも不正経理に加担したとの疑惑まで招いてしまうことになる。
喧伝されていた海外銀行の残高証明書の粉飾に関しても、事件後それを知った小野代表はM氏とその直接の上司である副代表に対して、社員が大勢いる前で今までになく声を荒げ、厳しく叱責したという。結局その後の調査で、逆に融資残高はそれ以前より減っており、粉飾残高証明などによる詐害行為はなかったことが証明され、小野光太郎氏は目を潤ませていたというくらいだから、いかに粉飾がらみの手段を弄することを嫌っていたかということである。

福井銀行と小野氏の関係性

当然のことだが、小野光太郎氏は銀行トップとはつき合いがある。
特に福井銀行の市橋七郎前頭取とは親密で、その優れた経営手腕を小野光太郎氏は認めてもいた。
特に強調していたのは、バブル崩壊後3千人近くいた行員を2千人前後にまで合理化する過程で、長期間自らが多くの企業に毎日の様に足を運び、深く頭を下げて行員再就職を頼み歩いた事実。
このことは地元経営者、社員にとって、「あの銀行でさえ大幅な人件費合理化努力を行っている」という強烈なインパクトを与え、不況に悩む地元各社の労使間に合理化による生き残りへの説得性のある道を開いた。
小野光太郎氏はそうした経営手腕に敬服し、付き合いこそしていたが、生臭い借入、融資の話はお互いに十数年したことがないという。
ましてや、「銀行へ提出されたと言う粉飾決算書など見たこともない」
これだけは当初からはっきり言っていた。
事件直後、「この様な一日にして信用を失う粉飾借入なる爆弾を抱えていたと知っていればステータスのある方々とのお付き合いや文化振興などを人に語っても詮無きことであった」と、呟くように言っていたが、粉飾決算書による会社経営などいずれわかることで長続きするはずがない。
小野光太郎氏のように文化振興といった年月の掛かるテーマを地元に根を下ろして実現するのには半永久的な努力が必要であり、粉飾といったいずれ露見する低次元な事柄とは対極にあるものである。